こんにちは。
今日のタイトルはこの本のタイトルからです。
著者の森山徹さんは、ちょうど一年前ぐらいにEテレのヘウレーカに出演された研究者の方なのかな?
森山さんは大学院を修了されたあと、電機メーカーで電車の推進制御装置の心臓部分を開発するお仕事をなさっていたそうです。そこで、電機品が未知の事態で予想外の変化を示す現象を通して、「心」のおもしろさに惹かれ研究を始めたという異色の経歴の持ち主です。
研究生活に入った森山さんは、ダンゴムシと出会い、そのお世話をしながら彼らの行動をつぶさに観察し、観察可能な行動にではなく、選択されずに抑制されたであろう行動こそが「心の現れである」と仮説を立てます。
そこで、ミリ単位で精密な実験装置を用意し、ダンゴムシにとっての未知の事態を作り出すことで、抑制された行動の発現を辛抱強く待つという研究をされ、それを突き止められた。
その一部始終について、とても丁寧に正確に書いていらっしゃいます。
ダンゴムシという、声も出さず、表情もあるのかないのかわからないような小さな虫を観察する森山さんの粘り強さにはただただ感心します。
それだけでなく、とにかく動物相手の研究をしようとするときは、「対象ととことんつき合う」ことを何度も強調されています。
実験の間、私たち観察者は「予想外の行動」が発現するのをひたすら「待つ」ことになります。…中略…
このように「待つ科学」は、相手を傷つけることは決してしないことを前提とします。それには、繰り返し述べてきたように「付き合い」が重要なのです。どんな条件で相手が傷ついてしまうかは、普段の付き合いの中でしかわかりません。(p213-214より)
- 待つことの大切さ
- 傷つけないことが前提
- 何が相手を傷つけるのかは普段の付き合いからわかる
とてもダンゴムシの実験のことだけを言っているようには思えないですね。
ダンゴムシなんて、そのへんから捕まえてきてポンと実験装置に入れれば、みんな似たような行動をするんだろう…ぐらいに思ってしまうけど、違うんですねえ。
ダンゴムシを怖がらせないよう、空腹になりすぎないよう、でも満腹すぎないよう、そして快適に…細かいところまで注意深くつき合って、やっとその「心」の現れに立ち会うことができる。
対象は小さいけど、そのストーリーは壮大なドキュメンタリーを読んでいるようでしたね。
私たちは、共に暮らす犬とここまでとことん付き合っているかなあ?
一行一行に驚きがあってどんどん先へ先へ読みたくなる本です。昆虫好きじゃない方もきっと引き込まれるはず。
ぜひ、機会があったらお読みになってみてください。
今日も読んでくださってどうもありがとう。