こんにちは。
3月14日に今年初めての藻岩山でヒグマ出没情報がありました。
春のお花シーズン前にドキドキです。
ここ数年、人の生活圏の間近どころか完全に生活圏内にヒグマが現れて大騒ぎになることがよくあります。
昔、内地の人に北海道出身者が「窓開けたらクマがいてさあ。」とか冗談で言ったりしましたけど、今は冗談じゃなくなってきた。
ヒグマ研究の第一人者でありアーバンベアにも詳しい酪農学園大学の佐藤喜和先生の論文、2018年のです。
「ヒグマの生息地としての森林とその管理ー天然林・人工林・林床植生そしてシカー」
を読んで『なるほどなあ』&『アタシなんにも知らない』が満載でした。
この論文の主旨は、針葉樹と広葉樹の混交林や人工林とヒグマのかかわり、シカ個体数増加による影響などについて整理し森林管理のあり方についての佐藤先生の意見を述べることです。
ヒグマが(本来は)森に暮らしているとは知っていても、季節ごとに違ったものを食べていてそれはなんなのか知らなかった。ましてや、森にとってクマがもたらしているメリットなんてものがあるなんて、初耳も初耳。
ヒグマはただただ森にある植物や昆虫やシカなどを食べている森の消費者なんだと。
この論文によると、ヒグマの森林での役割には3つあると言います。
- 系外から栄養運搬
- 攪乱パッチ創出
- 種子散布
少し言葉が難しい^^;;
例えば、1はヒグマが河口で遡上したサケ・マスを食べて、そのあと森で糞をする。そのヒグマの食べ残しをほかの動物や鳥が食べて、また森で糞をする。これによって海由来の窒素が陸の生態系に運ばれる、ということだそうです。他の系由来の窒素が陸の植生を豊かにしてくれるということなのでしょうかね。
3は、ヒグマが食べた木の実の種が糞として、広く運ばれていく。その範囲は、植物単体では行けないようなエリア拡大につながっている、というようなこと。
そして、最も興味深かったことは、シカの個体数増加がヒグマに与える負の影響。
てっきり、シカが増えると食べものが多くなってヒグマは万歳三唱\(^o^)/かと思いきやそうでもない。
そもそも、ヒグマは生きた成獣のシカを捕食することはまれで、せいぜい新生児のシカぐらいで、多くはシカの死体(越冬で餓死した個体、狩猟後放置された個体など)を食べているんだそうで。
それよりも、シカが増えることで、ヒグマにとって春夏の主要な食べ物である草本類が減ってしまう。食べものの取り合い競争になる。結果、ヒグマは人里に出て農作物を荒らして食べ物をとらざるを得ない。これによる人との軋轢増加は、結果的にヒグマの生存を危うくすることにつながるということ。
これにはとてもびっくり!
論文では、1990年代後半からシカが増加したことで森の植生が変化したり、樹皮食害による立木枯死など森林生態系の持続性や生物多様性が失われていると指摘しています。
シカの生息密度管理を含めて、森林を適切に管理することは、ヒグマにとっての生息環境の整備であり、同時にそれは人とヒグマが不用意に接触することによる、両方にとって痛ましい事故を防ぐ大切な手立てでもあると佐藤先生は結んでいます。
人の生活圏に現れヒグマが射殺されたニュースのたびに、殺されたヒグマが可愛そうとか、必要な処置だとかSNS上は賛否両論にぎやかになります。
私たちが知らなければいけないことは、まだたくさんあって、何を考えて何を議論すべきなのか?
佐藤先生の論文をきっかけに、知るべきことのしっぽが少し見えそうな気がしました。
テルモ地方は朝からベタ雪が降り続いて、近づきかけた春がちょっと遠くなった感じ…
南から渡ってきたアオサギたちは、このベタ雪をどうやってしのいでいるんだろう?